Martin Kippenberger(マーティン・キッペンバーガー、1953年ドイツ・ベルムント生まれ)は、戦後ドイツで最も影響力のある美術作家のひとりです。世界中にコアなファンを抱えながらも、長らく日本ではまとまって作品を展示する機会がありませんでしたが、ようやく2015年1月に、タカ・イシイギャラリーで日本における初めての大規模な個展が開催されました。
破天荒なキッペンバーガーについては、同展のプレスリリースをご覧ください。
本書は、前述した個展の会場風景写真をもとに構成されており、会場の入口から徐々に会場内へと進んでいく動線に沿っていくように展開していきます。
作家がユニークならば、本書の作品に対する視点もユニークに迫ります。会場を俯瞰したかと思いきや作品接近してみたりと、アングルの視点を自由自在に変化させながら多角的に捉えていくと、次第に画角の隅に他の作品が写り込んでいき、前後の写真が緩やかに関連していくのです。
アーティストの作品集というと、作品を正面の位置から捉えたオーソドックスな写真が続くものが多いなか、本書ではまるでインスタレーションが設置された会場内を実際に歩いているような追体験をもたらしながら、各作品のディテールをしっかりとみせるエディトリアルの活きたブックデザインに仕上がっています。
ソフトカバー仕様と手馴染みのいいハンディなサイズ感は、マルチプル作品を重要視し、現に積極的に制作してきたキッペンバーガーの取り組みともどこか重なってくるように思えます。
本書の終盤には、批評家・清水穣氏による書き下ろしテキストが寄せられています。これまで彼の作品集は専ら洋書しかなかったので、日本語で作品の深部に迫ることができる点でも意義深い1冊となっています。
Martin Kippenberger
Taka Ishii Gallery
200 Pages
Softcover
136 x 210 mm
English / Japanese
2015