隔年で開催されるヴェネツィア・ビエンナーレ美術展。国単位にパビリオンが設けられ、基本的には1国1アーティストが抜擢されます。いわば国家代表として招聘されたアーティストは、渾身の作品をもって臨みます。
本年(2015年)はちょうど開催年にあたりますが、オランダ代表となったのはherman de vries(ヘルマン・デ・フリース、1931年オランダ・アルクマール生まれ)。
彼は前年にはPOSTで個展を開催をしています。
昨今、人間や文化、そして自然との関係性は、徐々にビジュアルアートのなかでも芸術的なリサーチの主題になりつつありますが、それこそ彼が何十年もかけて取り組んできたテーマです。彼は60年以上かけて、アート・科学・哲学が世界、特に自然界の現実性と向き合うというコンセプトをもつ非常に万能な作品群を発展させてきました。作品のテーマは時代において原則的なもので、環境上の問題という点からしても一般市民からより広く注目を集めることは必至です。
本書はビエンナーレでの展覧会とパラレルワールドとしての位置付けになっていますが、その内容としては、デ・フリースとキュレーターのJean-Hubert Martin(ジャン=ユベール・マルタン、1944年フランス・ストラスブール生まれ)との対話をもとに展開してきます。マルタンは、共感覚・模倣(ミメーシス)・職人芸・サウンドと音楽・匂い・自然と環境など、デ・フリースのキーとなるコンセプトに直面し、作品そのものやデ・フリースの考えと、イメージ、テキスト、彼のテキストの至るところからその他の源となるようなものとが織り混ざります。
作品へより密に迫り、繋がりを作り出したり、読者や鑑賞者に対して歴史的・美術史的・哲学的な文脈を提供することで、デ・フリースの世界観を発見したり広げる契機となるでしょう。
herman de vries / to be all ways to be
Valiz
288 Pages
hardback
170 x 240 mm
English
ISBN 978-90-78088-99-8
2015