オランダのグラフィックデザイナーChristien Meindertsma(クリスティン・メンデルツマ、1980年オランダ・ユトレヒト生まれ)は、デザイナーという立場から、製品と原材料の生涯に着目しています。彼女の手がけた書籍は以前このページでもご紹介したことがあるので、記憶にあるかもしれません。
彼女の新たなプロジェクト「Bottom Ash Observatory」が、百科事典のような書籍にまとまりました。
今回メンデルツマが着目したのは、清掃工場の焼却炉の底から回収されるボトムアッシュ(焼却主灰)。100kgの家庭ゴミや産業廃棄物を焼却した残留物、つまり「廃棄物の廃棄物」で満たされた重さ25kgのバケツを通じて、160ページにわたり興味深いアプローチを展開しています。
巻頭の折込み図版には清掃工場の見取り図で説明された焼却のフローを経て、あらわれたボトムアッシュをふるいにかけ、乾燥させ、レーザー分析し、手作業で何万もの破片に分離して、おびただしい数の素材を抽出し続けます。大きさや素材の種類に応じて分類することで、ボトムアッシュの構成要素がより明確になっていくのです。
このプロセスを経て、最終的に亜鉛・アルミニウム・シルバーなど、もっとも価値のある12個の素材を溶解するに至りました。それを清潔なシリンダーに入れて提示し、ボトムアッシュの豊かさを端的に表しています。
構成要素を分離することで、結果として廃棄物に対して付加価値をつけるという極めて急進的なアプローチを通じて、メンデルツマはこの豊かな都市の鉱石の沈殿物が我々をどこへ導きうるかということを例証しています。
本書の共同著者であるフォトグラファーのMathijs Labadie(マーティス・ラバーディエ)は、このプロセスの全ての段階を事細かに捉えました。望遠鏡的な視点でもってボトムアッシュへレンズを近づけることで、素材の塊が彗星や隕石のように現れます。ふるいにかけられたボトムアッシュが入ったバケツはまるで惑星のような外見を帯び、一方で価値のある素材で満たされたシリンダーさえも、プラネタリウムのような神秘的な気高さを孕んでいます。
メンデルツマとラバーディエが記録したボトムアッシュの解体の精密さは、科学的な正確さを伴いながら、新しく発見された原燃料を描写する18世紀の旅行記へと立ち返ります。
そして、例えば破片のポートレイトの貼込みをめくると断面図が表れるなど、貼込みや折込み図版を効果的に挿入した造本は、読者にも「調査」を彷彿させ、臨場感を演出することでより深い興味を引き出すことに一役買っています。
2015年、我々はもはや新たな素材を見つける旅に出発する必要はなくなりました。今日の我々の挑戦は、身近な資源における新しい使い道を探すこと。本書では、ボトムアッシュという資源における無限大の汎用性を実践しているのです。
Christien Meindertsma / BOTTOM ASH OBSERVATORY
Thomas Eyck
160 Pages
Hardcover
300mm x 420mm
English
Edition of 2,000 copies
ISBN: 9789081865210
2015