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idea 381号 [越境の遍歴 田中義久のパースペクティブ] :特別版

Added on by Yusuke Nakajima.

idea No.381 
越境の遍歴 田中義久のパースペクティブ


企画・構成:田中義久、アイデア編集部

本特集ではデザイナー、田中義久の活動を特集する。
1980年生まれの田中は、インディペンデントな出版社やギャラリーの写真集、アートブックのデザインをはじめ、さまざまな企業、イベント、プロジェクトのアートディレクションを行い、そのほとんどに企画構想や運営のレベルからかかわっている。田中のように受注制作を越えた自主的「生産」を行うデザイナーのあり方は、2000年代以降欧米を中心に見られる世界潮流のひとつであり、出版やアートのような文化領域周辺において顕著だ。そうした潮流はデザインが専門的職種から人の生そのものを規定する概念へと拡張されていく時代のなかで、人と世界の間をあらためてとりもとうとするデザイナーの精神運動とでもいうべきものだ。田中はいちはやくそのような考え方を自覚し、日本において独自の実践を展開していったデザイナーのひとりだろう。
特集の構成は個人をテーマとする点で従来のようなデザイナー作品集的な形式をとっているが、その目的はそれぞれの実践の背景にある思想や文脈を通じて現在のデザインの可能性を批評的に捉えることにある。そこで、先行世代や同世代のデザイナーのコメントや協働する編集者の論考など複合的な視点を通じ、田中義久の実践に潜む構造の一端が明らかになる。その構造は、今後のデザイナーにとって重要なロールモデルとして参照されていくだろう。

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<特別版の仕様>
・表紙の色調、加工の変更
・表4の広告を痕跡を残しつつ消去
・小口に表紙のイメージと連結するようなキズ加工
・より開きのいい製本

販売価格:4,000円+税

Martin Kippenberger

Added on by Yusuke Nakajima.

Martin Kippenberger(マーティン・キッペンバーガー、1953年ドイツ・ベルムント生まれ)は、戦後ドイツで最も影響力のある美術作家のひとりです。世界中にコアなファンを抱えながらも、長らく日本ではまとまって作品を展示する機会がありませんでしたが、ようやく2015年1月に、タカ・イシイギャラリーで日本における初めての大規模な個展が開催されました。
破天荒なキッペンバーガーについては、同展のプレスリリースをご覧ください。

本書は、前述した個展の会場風景写真をもとに構成されており、会場の入口から徐々に会場内へと進んでいく動線に沿っていくように展開していきます。
作家がユニークならば、本書の作品に対する視点もユニークに迫ります。会場を俯瞰したかと思いきや作品接近してみたりと、アングルの視点を自由自在に変化させながら多角的に捉えていくと、次第に画角の隅に他の作品が写り込んでいき、前後の写真が緩やかに関連していくのです。

アーティストの作品集というと、作品を正面の位置から捉えたオーソドックスな写真が続くものが多いなか、本書ではまるでインスタレーションが設置された会場内を実際に歩いているような追体験をもたらしながら、各作品のディテールをしっかりとみせるエディトリアルの活きたブックデザインに仕上がっています。

ソフトカバー仕様と手馴染みのいいハンディなサイズ感は、マルチプル作品を重要視し、現に積極的に制作してきたキッペンバーガーの取り組みともどこか重なってくるように思えます。

本書の終盤には、批評家・清水穣氏による書き下ろしテキストが寄せられています。これまで彼の作品集は専ら洋書しかなかったので、日本語で作品の深部に迫ることができる点でも意義深い1冊となっています。

Martin Kippenberger
Taka Ishii Gallery
200 Pages
Softcover
136 x 210 mm
English / Japanese
2015

 

Takashi Homma / NEW DOCUMENTARY

Added on by Yusuke Nakajima.

米TIME誌が選ぶ写真集のベストブックは、その年に出版された選りすぐりの写真集が名を連ねることで定評があります。
2014年は、TIME誌の写真担当エディターのほかに、キュレーターや写真に特化した出版社といった写真の専門家たちにより、27の写真集が選出されました。
イギリスを拠点とした出版社・MACK(マック)の創設者であるMichael Mack(マイケル・マック)は本書を選出し書評しています。

「建前上はふたつの展覧会を網羅するカタログだが、この写真集は昨今出版されたなかで最もオリジナルで、エレガントな構成とデザインを併せ持つものだ。インスタレーションの写真と実際の作品をコラージュしており、緻密なイメージは作家自身の足跡を紡ぎ、分岐した物語を組み立てる。この写真集の唯一の欠点は 500部しか出版されないことだ。」(マイケル・マック)
※日本語訳:between the booksの記事より抜粋

 

 

ホンマタカシの自身初となる美術館での個展「ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー」は、金沢21世紀美術館を皮切りに、東京オペラシティ アートギャラリーを経て、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館へと巡回する大規模な開催でした。
美術館での初個展ということではもちろん、各会場でそれぞれの展示構成がなされたことでも話題となりました。

最後の巡回地となった丸亀展では、これまでの会場とは大きく異なる点として、一連の作品シリーズが時系列に沿って展示されました。
同時進行で制作された別々のシリーズが時間軸をもとに配列されると、別個に独立していた作品同士が図らずも隣り合わせになり、観る側へ新たな視点が与えられます。
特に[Tokyo and My Daughter]の少女が年月を経るごとに成長していくようすが、同時期に発表した作品と並んで展示されていると、何とも言えない感慨深いものがあります。

 

 

2014年に開催されたグループ展「拡張するファッション」に参加した際には、1990年代当時に発表したファッション写真の作品を現在の視点で再構成しました。
ドキュメンタリーフォトの手法で従来のファッション写真に新風をもたらしたことは日本の写真界においても衝撃的な出来事でしたが、当時の世相をリアルに捉えた作品は、約20年を経た現在のわたしたちに対してもなお鮮烈な印象を与えます。

 

参考文献・画像転載
between the books

Takashi Homma / NEW DOCUMENTARY
SUPER LABO
192 Pages
Hardback / Clothbound
18.9 x 24.9 cm
ISBN 978-4-905052-72-2
Edition of 500 copies
2014