写真家Walter Niedermayr(ウォルター・ニーダーマイヤー、1952年イタリア生まれ)の作品を説明するとき、
ハイキー(露出オーバー)というキーワードは外せません。
彼は雪山のランドスケープやインフラといった壮大なスケールの被写体を捉えていますが、
真っ白い情景のなかに人物や建築物などが点在する様子は、浮世離れした独特の雰囲気が漂います。
また、建築写真にも定評があり、日本では建築家ユニットの妹島和世+西澤立衛/SANAAの建築物を撮影することでも知られています。
なかでも彼らの代表作である金沢21世紀美術館を撮影したシリーズは、これまで出版された彼の写真集にも収録されています。
本書は、彼が2005年と2008年の二度に渡り、イランのテヘラン・イスファハン・ヤズド・シーラーズなどの小都市や歴史的な場所を訪れたプロジェクトをまとめたものです。
文化的・歴史的な文脈を踏まえつつ、イランの現代建築をあらゆる観点から捉えた風景写真は、
異国に実在するあるがままの景色をより印象深い情景として映し出しています。
本書の制作にあたり、グラフィックデザイナーと出版社との密なコラボレーションワークも見逃せません。
グラフィックデザインは、メーフィス&ファン・ドゥールセンによるもの。
彼らはオランダのアムステルダムを拠点にする2人組のユニットで、主にアートブックや展覧会カタログといったビジュアルブックのデザインを数多く手がけていますが、
その目覚ましい活躍は同年代のデザイナーの中でも抜きん出ており、多方面から絶大な信頼を得ています。
気鋭の現代写真家とデザイナー、そしてあらゆるクリエイティブな領域のアートブックに特化した出版社との競演により、出来映えのいい1冊に仕上がっています。
Walter Niedermayr / Recollection
Hatje Cantz
170 Pages
Hardcover
26.1 x 30.2 cm
English and German
ISBN 978-3-7757-2738-9
2010