オランダの映像作家/写真家のJohan van der Keuken(ヨハン・ファン・デル・クーケン、1938-2001)は17歳の時、写真集[wij zijn 17(オランダ語で[We are 17]という意味)]で鮮烈なデビューを果たします。
その後、[achter glas]、[Paris Motel]を続けて発表するものの、24歳の若さで映像作家へと転身します。
60年近く経った現代でもなお観る者を魅了する作品を生み出していながらも、実に寡作の写真家と言えるでしょう。
クーケンは何気ない営みのなかで垣間見えるほんの一瞬の出来事を捉えることに長けていました。
まるで映画のワンシーンを収めたかのような被写体の自然な姿に、日常はこんなにもドラマチックなのかと感心させられます。
本書はウィレム・ファン・ゾーテンダール(1950年ハーグ生まれ)によって編集・デザインされました。
彼はグラフィックデザイナーですが、90年以降、自身の名を冠した出版社を通じてさまざまな写真集の制作に携わってきました。
加えて、オランダが誇る名門のヘリット・リートフェルト・アカデミーで教鞭を執るほか、世界中で写真展のキュレーションの経験を重ねるなど、その活動は多岐に渡ります。まさに現代写真界における重鎮と言えるでしょう。
また、ゾーテンダールは、クーケンの元妻であり、現在はゾーテンダールとパートナーシップを組んでいるノシュカ・ファン・デル・レリーとともにクーケンの遺産を管理していることもあり、自身の出版活動の一環としてクーケンのアーカイブシリーズを手がけています。
その第3弾にあたる本書のタイトル[Mise au jour]には、「光をもたらす」「掘り当てる」あるいは「アップデートする」という意味があります。
収録されている45点の作品は、その大半がこれまで未発表だったもので、いずれも1956-1982年にフランス・スペイン・イタリア・オランダ・ギリシャ・アメリカと世界各国を訪れ、小型カメラのライカM3で撮影されました。
映像作家となっても、人々の些細な表情の変化や興味深い情景に向けるまなざしは変わりません。
ほんの少しのユーモアを交えながら、見事なまでに詩的で美しい写真表現へと昇華しています。
Johan van der Keuken / Mise au jour
Van Zoetendaal Publishers
112 Pages
Paperback with foldings
21.6 x 33 cm
ISBN 978-90-72532-27-5
Edition of 750 copies
2015
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