Aglaia Konrad / Desert Cities

Added on by Yusuke Nakajima.

Aglaia Konrad(アグライア・コンラッド、1960年オーストリア・ザルツブルク生まれ)は、現在はベルギー・ブリュッセルに拠点を構え、写真に主軸を置くアーティスト。以前はオランダ・マーストリヒトのヤン・ファン・エイク・アカデミーで指導にあたり、現在はブリュッセルで教鞭を執っています。
彼女は主に欧米で個展を開催するほか、ドクメンタX(1997年)を始めとする国際的なグループ展にも参加しており、日本には2010年にトーキョーワンダーサイトでアーティスト・イン・レジデンスで滞在していました。

「大都会の都市空間」というのは、彼女の作品の中核をなすものです。1990年以降には、異なった大陸にある巨大な都市の多様性における、戦後の都市の景観やそこのあらゆる兆候を調査してきました。

1992年にエジプト・カイロでの短い滞在のなかで、彼女は「Desert Cities(砂漠の都市)」の存在を知り、後に長期間に渡るプロジェクトへ発展することになるこの都市の、とてつもないスケールに興味を引きつけられました。そして、社会地理的・政治的な観点から、環境の変化によって引き起こされる多くの疑問に向き合うために「Desert Cities」プロジェクトを立ち上げることになりました。

モノクロ写真とカラー写真を織り交ぜながら、何もない砂地に建造物が立ち並び、道路が敷設され、あたかも砂漠のオアシスのように都市が形成されていく過程を追っていきます。建造物の外観からは、装飾を排したモダニズム 建築の系譜が伺えるのですが、ほとんどひと気のない都市に突如あらわれる建造物はまるでブロックのおもちゃのような佇まいで、浮世離れした色彩も相まって気味な印象を与えます。
外来の模範と土地特有の要素、建造物と遺跡、現代性と伝統。相反するものの狭間で行われる対話にフォーカスを当てていくと、砂漠の都市がいくら変貌を遂げたとしても、結果として世界中にありふれた景観が生まれているという逆説的な現実を突きつけられます。
クラシックな建築写真でもドキュメンタリー・フォトでもないアプローチで、アーティストとして長い年月をかけて何度も現地に赴き、めまぐるしく変化を遂げる都市の姿を目の当たりにした者としての視点が、本書を通じて浮き彫りになることでしょう。

印刷された紙の選出からは、デザイナーのMevis & Van Deursen(メーフィス&ファン・ドゥールセン)によるデザイン的に優れた采配が見て取れます。一面は写真プリントのように光沢があり、多くの読者にとって遠く離れた異国の情景を鮮明に描写しています。そうかと思えば、ページをめくった裏面はザラザラとした紙になっていて、まるで砂漠の砂埃を連想させる。異なった紙質の反復が、砂漠の都市の現状をあらわすための相乗効果を生み出しているのです。

Aglaia Konrad / Desert Cities
JRP|Ringier
236 Pages
Images 83 color / 94 b/w
Softcover
230 x 310 mm

English
ISBN: 978-3-905829-59-4
2008