今週より、Edition Patrick Freyの出版社特集を開始いたします。
Edition Patrick Freyは1986年に創設され、スイスのチューリッヒを拠点に活動しています。
今まで200冊以上の本を出版しており、スイスを中心に世界各国のアーティストと密接に協力し、ユニークなプロジェクトを少部数で発表し続けている出版社です。
彼らは、若いアーティストにとっての初めての出版の機会を提供することを目的としていますが、それだけではなくヴァルター・プファイファー、ピーター・フィシュリ & ディヴィッド・ヴァイス、アンドレアス・ツストなどのキャリアの長いアーティストとのコラボレーションも継続的に取り組んでいます。
年間20冊の出版物を発行し、主に写真、アート、日常文化や大衆文化を扱ったプロジェクトに力を入れています。
ユニークでウィットに富んだ彼らの出版物をぜひ見にいらしてください。
書籍はオンラインストアでもご紹介しております。遠方の方にもお楽しみいただけますと幸いです。
スイスのデザインスタジオ「Prill Vieceli Cremers」による作品集。本書はその名の通り紙幣に印刷されている絵柄で構成された一冊。政治的なメッセージや、歴史的に重要な出来事、優れた人物、ステータスシンボルや風景などが描かれており、紙幣が理想的な世界を賛美する小さなポスターとも形容できる存在であることを示唆する。国が異なっていても、紙幣の絵柄にはしばしば同じようなモチーフが繰り返し使われることがある。人間の姿は哀愁に満ちた形で描かれ、彼らの身振りと表情は世界中のどこでも解釈しやすいように表現される。
本書では、ドイツ人哲学者のヴァルター・ベンヤミンが言うところの「紙幣の装飾から語られるスピリット」を喚起させ、どういった絵柄が紙切れの上に印刷され、無価値なものを価値のあるものへと変化させてきたのかを紹介している。
スイスを拠点に活動するアーティストであり美術教育者のオリビエ・スッターの作品集。本書に収められた写真が様々な時代のものであることは、ポートレイトの撮り方やスタイルの違いから理解できる。一人で、もしくは父親や母親、兄弟姉妹や友達と一緒に写っている子供たちの写真を見ていると、何故彼らがこのコレクションに加えられたのか疑問になってくる。ページを捲るうちに、彼らが未来の作家や数学の天才、果ては独裁者まで、有名無名の人々の幼い時の姿であることがどことなく分かってくる。この眠たそうな子供が、やがてジミ・ヘンドリックスになったのだろうか?クラスメイトの中で一人不機嫌そうにしている少年は、未来のアルチュール・ランボー?これは小さい頃のアンゲラ・メルケル?そしてこれは悪ガキ時代のアル・カポネ?驚くような発見があること請け合いである。本書に登場する子供たちの顔を見ていると、子供であれ大人であれ、顔を見ればその人の運命がわかるという考えがいかにナンセンスであるかがよくわかる。我々は、作者が提示する世界中どこにでもいる子どもたちと何ら変わるところのない何十個もの幼い顔を見つめて、彼らがどんな大人になったかを知って、ただただ面白がったり驚いたりするばかりである。
スイス人フォトグラファー、フィリップ・ミュラーの作品集。作者はチューリッヒにおける今や世界最大のテクノパーティ「ストリートパレード」の初開催時や、アンダーグラウンド・レイヴ、パーティ、クラブのバックステージやプライベートなイベントでの親しげな様子など、場所やシチュエーションを問わずその場を生々しく撮影し、様々な雑誌に寄稿することで、1990年代初頭のスイスにおけるテクノシーンの黎明期を追った。
本書のタイトルである「120bpm」は、クラブトラックの1分あたりの拍(ビート)数である。スイス国内で、若者にとって最後の偉大なるムーブメントの一つとなるべくテクノが急激に成長した時期を、作者は前のめりに凝縮された写真のシークエンスで刻んでいる。本書は作者の写真のほか、レイヴ雑誌やファンジンからの切り抜き、また初期のシーンを築いたレイバーたちによる生の証言が収録されている。