「重要な作品が生み出される場所は、いつだってわたしたちを魅了する。もしだれかがそうした特別な場所へ足を踏み入れたら、すぐさまその人物の手がかりや、そこをまとう偉大さを探しまわることになる。」(Andreas Beyer)
アトリエには、スペースのプロフェッショナルである建築家の設計した建物やスタイリストが設えたコーディネートとはひと味違った、長い年月をそこで過ごす事でしか生まれてこない味わいがあります。歳月とともにアーティストたちの感性がちりばめられていった特別な場所に魅力を感じる人も多いのではないでしょうか?
本書は、ドイツ現代写真の基礎を築いたベッヒャー夫妻の生活と制作の拠点を捉えた写真集。彼らは1961年から2003年のあいだ、ドイツ・デュッセルドルフのKaiserwerthに位置する元々は紙の断裁所だった建物をアトリエとして過ごしていました。写真家・Matthias P. Schallerが2001年2月から2002年9月のあいだに訪れて撮った写真で構成されています。
白を基調とした空間に黒と茶系の落ち着いた色合いの什器が置かれ、保存用の箱や小物には以外にもグリーンやオレンジのものが使われています。適度に整頓され、緩やかなルールで統一された空間は秩序を感じる引き締まった印象で、まさにベッヒャー夫妻らしい設え。
コンテンツに加えて端正なブックデザインと美しい印刷が秀逸なこの写真集、まさにSteidlにしか作れない一冊です。
Matthias Schaller [ The Mill]
Essay by Thomas Weski
120 pages, 55 colour plates
29 cm x 23.5 cm
Hardcover with dust jacket