Karel Martens / Reprint

Added on by Yusuke Nakajima.

オランダはグラフィックデザインの実践の場が多く、また充実した教育環境があることから、豊かな土壌が形成され、結果として世界的にみても目覚ましい活躍をするグラフィックデザイナーをこれまでに多数輩出してきました。
そのオランダでは3年に1回、タイプフェイスの領域で大いに貢献した書体デザイナーや活版技術者へ[the Gerrit Noordzij Prize](ヘリット・ノールツァイ賞。伝説的なタイポグラファーのヘリット・ノールツァイに由来する)を授与しています。2012年には、タイポグラフィを専門とするグラフィックデザイナーのKarel Martens(カレル・マルテンス)が受賞しました。
これを機に、2015年にオランダ・ハーグのKABK: Royal Academy of Art, The Hague(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ)で開催された展覧会にあわせて本書が出版されました。

彼はこの道54年のキャリアのなかで、クライアントから依頼されたコミッションワークのほかにも、自主的に実験的な制作を続けています。
代表作のひとつは、既成の印刷物のうえに、日常的に目にする工具の部品などの「ファウンド・オブジェクト」を象ったさまざまな形状のシルエットを重ねて印刷したシリーズです。印刷を重ね合わせた部分が下の印刷面を覆うことはなく、まるで色付きのセロファンをかざしたときのように透過しています。発色のいい彩りが目を引くばかりか、単色刷りの色を重ね合わせることで新たな色が生まれるという、印刷の本質に迫るアプローチは独自性が高く、一度観たら忘れられません。

彼の受賞に際しては、38年に渡りグラフィックデザインの領域で教鞭を執り、後進の育成に積極的であったことも一因となりました。本書の制作にあたり、デザインの面で彼らの学生たちともコラボレーションしています。

参考文献
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 第321回企画展 KMカレル・マルテンス
 

Karel Martens / reprint
Roma
84 Pages
170 x 240 mm
ISBN: 9789491843310
2015