Candida Höfer / Düsseldorf

Added on by Yusuke Nakajima.

Kunstakademie Düsseldorf(クンストアカデミーデュッセルドルフ、国立デュッセルドルフ芸術アカデミー)は、1773年にドイツ・デュッセルドルフに創立された芸術大学。Joseph Beuys(ヨーゼフ・ボイス)、Nam June Paik(ナムジュン・パイク)を筆頭としたフルクサスの活動が盛んだったことや、ゲルハルト・リヒターをはじめとする世界的にも活躍するアーティストを多数輩出していることで知られています。
多くのアーティストにとっての学び舎であり教鞭を執ってきたこの伝統的なアカデミーでは、1976年以降には写真家のBernd and Hilla , Becher(ベルント&ヒラ・ベッヒャー)夫妻が写真クラスを開設し、教壇に立ちました。初期メンバーはAndreas Gursky(アンドレアス・グルスキー)、Thomas Ruff(トーマス・ルフ)、Thomas Struth(トーマス・シュトゥルート)といった面子が揃います。師匠のタイポロジー(類型学)的アプローチの薫陶を受けた彼らは総じて「ベッヒャー派」と称され、ドイツ現代写真界にとって欠かすことのできない存在です。

この初期メンバーのひとり、Candida Höfer(カンディダ・ヘーファー、1944年ドイツ・エーベルスヴァルデ生まれ)。彼女はその研究において、彼女自身が直に接したり、数えきれないほどの旅行のなかで見つけたモチーフに対して、たとえそれが単一のオブジェだったり、建築空間や人々であろうと、敬意を示したうえで適切な距離を保ってきました。彼女は被写体の威厳さを損なわないようにして写真に収めます。

 

1968年当時のリバプールの人々や1970年代のドイツに移民したトルコ系の外国人労働者のポートレイトは、ほとんど叙情的さはなく極めて冷静な視点から見つめることで、その場の空気感がありありと伝わってきます。

 

室内空間、図書館、美術館、エントランスホールといった公共の場で撮り収められた写真にはほとんど人影がなく、無機質な客観性と建築の構造やディテールをつぶさに捉えた点を特徴としています。線対称の構図を積極的に採用し、光の使い方や入射を巧みに生かしながら、絵画とも見紛うような、あたかも魔法にかかったかのような光景を映し出し、観る者の目前に迫ります。

 

本書は彼女にとってなじみ深いデュッセルドルフを皮切りに、オーストリア・リンツ、スイス・ルツェルンを巡回した個展にあわせて出版されたカタログです。
彼女の作品群と並んで、1960年代後半から70年代前半にかけて撮影されたセルフポートレイトや、近しい人々との団欒のようすもあわせて収録されており、彼女の人となりを垣間みることのできる貴重な一冊に仕上がっています。

 

Candida Höfer / Düsseldorf
richter|fey
140 pages
120 color plates and 35 b/w plates
Paperback, thread-stitched
22.8 x 29.8 cm
ISBN: 978-3-941263-62-8
2013