昨今、インターネットの発達とともに、情報は格段に速く・広範にわたり届くようになりました。それでもなお、印刷物による発信が絶大な効果を発揮するのも事実です。
視覚的に強いインパクトを与えること。
ビジュアルや文字情報が紙面に定着して留まっていること。
手書きで一言添えるなどの工夫によって、受け手に向けてよりパーソナルな伝達ができること。
気に入ったものを保管しておく、すなわちコレクションできること。
ざっと挙げるだけでも、さまざまな長所があります。
展覧会の告知についても、印刷物は欠かすことのできないツールです。具体的にはインビテーションカードやフライヤー、ポスターといったものが挙げられますが、これらは総じてエフェメラ(=「儚いもの」の意味)と呼ばれます。
アーティストやギャラリスト自らにより直筆のメッセージが添えられていたり、制作当時の印刷技術や紙が実例として残されているエフェメラは、アート愛好家のみならず、グラフィックデザイナー・キュレーター・美術史家という各方面の専門家からしても非常に貴重なアーカイブです。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)ライブラリーの書誌学者であるデイヴィッド・シニアは、1960年代以降に制作された展覧会にまつわるエフェメラの多種多様なアーカイブから厳選したものをもとに展覧会[Please Come to the Show]を企画しました。初めは同館内で展示され、のちにイギリス・リバプールのExhibition Research Centreに巡回し、その際に本書が出版されました。
MoMAの所蔵するコレクションから実物の複写がフルカラーで収録されている本書は、何気なくばらまかれたエフェメラを丁寧に所蔵し続けてきた行為の積み重ねの賜物であり、さらに時の経過を経てなお一層その価値を高めることにも繋がっていると言えるでしょう。
Please Come to the Show
Edited by David Senior
Occasional Papers
160 Pages
Paperback
19 x 25cm
English
ISBN 978-09569623-7-9
6/2014