この度POSTでは、一人のデザイナーによるブックデザインを紹介する展覧会[SPOT]を開催する運びとなりました。
一冊の本ができあがる過程で、デザイナーは本の仕上がりを決定づける大きな役割を担っています。
しかし、本を作る上でデザイナーがどういった役割を担っているのか、仕上がった本にはその一部分しか表れていません。
定期的に開催する[SPOT]は、毎回一組のデザイナーにフォーカスし、彼らがデザインした本を展示するとともに、インタビューを通じてそれぞれのブックデザインの背景にあるコンセプトや、デザイナー/作家間の協働作業について紹介し、本作りにおけるデザイナーの役割やブックデザインについて知ってもらうための展覧会です。
[SPOT]の第4回目となる今回は、デザイン誌 [idea] の最新号 [idea No.381 越境の遍歴 田中義久のパースペクティブ] 刊行に合わせ、POSTのアートディレクションも手がける田中義久のブックデザインに焦点を当てます。会場では、これまでに手がけてきたアートブック60点以上を一堂に展示、すでに絶版となっているタイトルも展示・販売いたします(一部、展示のみのタイトルも含む)。
会期中にはトークイベントの開催や、本展に合わせ部数限定で制作された特別仕様のidea 381号も販売を予定しています。
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会場:POST 150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-10-3
会期:2018年3月13日(火)ー4月22日(日)(会期を延長しました)
(3/23(金) - 3/25(日)はイベントのため閉廊)
時間:12:00 - 20:00
定休日:毎週月曜日
協力:アイデア編集部
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田中義久(たなか・よしひさ)
1980年静岡県生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。
永続性の高い文化的価値創造を理念に、批評性を持ったデザインを実践している。主な仕事に東京都写真美術館をはじめとした文化施設のVI計画、
ブックショップ「POST」、出版社「CASE」の共同経営、「The Tokyo Art Book Fair」、「Daikanyama Photo Fair」などのアートディレクションがあり、アーティストの作品集や共同制作も定期的に行なっている。また、飯田竜太(彫刻家)とのアーティストデュオ「Nerhol」としても活動し、
主な個展に「Index」foam photography museum(オランダ)、「Promenade」金沢21世紀美術館、「Interview, Portrait House and Room」Youngeun Museum Contemporary Art(韓国)がある。
idea No.381
越境の遍歴 田中義久のパースペクティブ
企画・構成:田中義久、アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,北岡誠吾)
本特集ではデザイナー、田中義久の活動を特集する。
1980年生まれの田中は、インディペンデントな出版社やギャラリーの写真集、アートブックのデザインをはじめ、さまざまな企業、イベント、プロジェクトのアートディレクションを行い、そのほとんどに企画構想や運営のレベルからかかわっている。田中のように受注制作を越えた自主的「生産」を行うデザイナーのあり方は、2000年代以降欧米を中心に見られる世界潮流のひとつであり、出版やアートのような文化領域周辺において顕著だ。そうした潮流はデザインが専門的職種から人の生そのものを規定する概念へと拡張されていく時代のなかで、人と世界の間をあらためてとりもとうとするデザイナーの精神運動とでもいうべきものだ。田中はいちはやくそのような考え方を自覚し、日本において独自の実践を展開していったデザイナーのひとりだろう。
特集の構成は個人をテーマとする点で従来のようなデザイナー作品集的な形式をとっているが、その目的はそれぞれの実践の背景にある思想や文脈を通じて現在のデザインの可能性を批評的に捉えることにある。そこで、先行世代や同世代のデザイナーのコメントや協働する編集者の論考など複合的な視点を通じ、田中義久の実践に潜む構造の一端が明らかになる。その構造は、今後のデザイナーにとって重要なロールモデルとして参照されていくだろう。
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http://post-books.info/new-arrivals/2018/4/13