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ROGER CAILLOIS, LA LECTURE DES PIERRES

Added on by Yusuke Nakajima.

Roger Caillois(ロジェ・カイヨワ)という人物をご存知ですか?
1913年にフランスで生まれた彼は、一般的には文学者・批評家・社会学者・哲学者としての顔を持つことで知られています。自身の専門領域が極めて幅広く、神話・戦争・遊び・夢など多岐にわたる研究を重ね、著作を残してきました。学生時代にはシュルレアリスム運動に参加していたものの、そこからは程なくして身を引いたと伝わっています。

さまざまな物事に好奇心を抱くだけでなくそれを突き詰めていくカイヨワが、ごく若い頃に興味を持ったもの。それは「鉱石」です。
これらの切断面をみてみると、人為的に作られたものでは到底及ばない、自然が生みだした有機的な曲線によって描かれる美しい造形があらわれます。
彩り豊かな色合いに思わず息を呑み、まるでこの世のものとは思えないような夢見心地になることでしょう。

本書に収録されている美しい鉱石の数々は、200点近いロジェ・カイヨワのストーン・コレクションの一部です。これらの実物は、フランス・パリにある国立自然史博物館(Muséum National d’Histoire Naturelle de Paris)に遺贈されました。

実は、2015年春に銀座メゾンエルメス フォーラムで開催された展覧会・「線を聴く」展では、カイヨワのストーン・コレクションのうち約60点が展示されました。自然界による素晴らしいギフトを目の当たりにした来場者からは、感嘆の声が相次いでいたようです。

錚々たるコレクションのポートレイト写真は、その特性を克明に写し出し、まるで実物を手元で見ているかのような臨場感を伴います。
また、名高い著述である「Stones」「The Writing of Stones」「Paradoxical Agates」の改訂版も収録され、ビジュアルの面ではもちろんアーカイブ資料としても充実した内容になっています。

参考文献
銀座メゾンエルメス フォーラム「線を聴く」展

 

ROGER CAILLOIS, LA LECTURE DES PIERRES
Éditions Xavier Barral
432 pages
Hardcover
190 x 253 mm
About 150 color photographs
French

ISBN: 978-2-36511-057-0
2014

Francisca Mattéoli / Escales autour du Monde

Added on by Yusuke Nakajima.

言わずと知れたファッション・メゾン、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)。
1854年にトランクメーカーとして創業し、先行く時代を見据えた画期的な素材選びや高いクオリティを誇るものづくりによって信頼を集め、その名を世界に馳せていきました。

創始者の孫にあたる3代目のGaston Louis-Vuitton(ガストン・ルイ・ヴィトン)は、さまざまな分野に造詣が深く、また生涯にわたり旅人であったと言われています。
少年時代から博識なコレクターだったガストンは、数多くのトランク、また書籍や印刷物といった旅にまつわる古い品々を骨董商や競売で入手しました。なかでも特にホテルの利用客のトランクに貼られるホテルのラベルステッカーの収集はその数3,000点を超え、圧倒的なコレクションであったことが伺えます。
本書は、ガストンが個人的にコレクションしていたラベルを多数収録しています。

20世紀前半といえば、まだ旅が限られた富裕層のための特別なものでした。「ホテルのプロモーションを狙ってゲストの荷物に貼り付けられたラベルは、その持ち主の旅がいかに素晴らしいものであったかという証になる」というエピソートは、非常に興味深いものです。色とりどりのグラフィックワークは時代感がよくあらわれており、一世紀を経た現在のわたしたちからみても魅力的に映ります。

世界的に著名なホテルから日本の老舗ホテルまでと豪華なラインナップのなかに、知っているホテルを見つけるとつい嬉しくなる。
ラベルから今まで訪れたことのない場所を想像し、まるでそこへ訪れたかのような気持ちになる。
そうやって、読者にも旅の高揚感をもたらします。

重厚感のある焦げ茶のハードカバーで綴じられた本は、ホテルロゴで構成されるコラージュを配した厚みのある小口が目を引きます。
コンセプトをブックデザインへと丁寧に落としこみ、完成度の高い1冊となりました。

参考文献
http://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/articles/gaston-louis-vuitton-collector

Francisca Mattéoli / Escales autour du Monde
Éditions Xavier Barral
512 pages
Hardcover, full-format
165 × 240 mm
ISBN : 978-236511-012-9
2012

Annette Messager / Continents noirs

Added on by Yusuke Nakajima.

Annette Messager(アネット・メサジェ、1943年生まれ)は、フランスを代表するアーティストです。
ドイツ・カッセルで開催されるドクメンタをはじめとする名だたる国際展にも参加していますが、なかでも2005年の第51回ヴェネツィア・ビエンナーレにフランス館代表として出展した際には、金獅子賞を受賞しました。
2008年に東京・六本木の森美術館で、日本では初となる大規模な個展が開催されたことが記憶に残っている方もいるのではないでしょうか。
直近ですと、2015年には大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレへの参加が決まっています。

彼女は1970年代前半以降、本格的に作品の制作を始めました。写真、ドローイング、刺繍、動物のぬいぐるみ(剥製)など、日常的によく目にするようなあらゆる素材を巧みに織り交ぜて作品を構成していくインスタレーション作品で知られています。
物語性を帯びバリエーションに富んだ作風に見受けられますが、遊び心のある無邪気さと残酷さといった相反する要素が共存し、心をかき乱すような緊張感を孕んでいる点に共通項を見出すことができます。

本書は、2012年10月から2013年2月にかけてフランスで開催された、彼女の個展にあわせて出版されました。
ジョナサン・スウィフトによるガリヴァー旅行記の世界から間接的にインスパイアされて制作された本作は、SFやファンタジーを彷彿させるような表現で、一種の哲学的物語や政治的寓話のような現代世界が抱える悪を描写しています。
シリアスな緊張感は彼女の嘲笑に対する愛着や遊び心によって活性化され、鑑賞者へ幼少時代の世界を喚起させることでしょう。

趣向を凝らした造本も見逃せません。
腰のない紙を用いて袋とじ製本されたページに混じって、所々に油紙のような材質の薄い紙が挟まっています。この茶色い紙越しに、隣り合わせたページのビジュアルが朧げに透けてみえるようすは、彼女の作品が醸し出す不穏な心もとなさを物質的にも表現しており、本という形態で作品をみるときには非常に効果的な演出になっています。

Editions Xavier Barralは、研ぎ澄まされた美意識はもちろん、デザイン・編集の面での細やかな工夫の積み重ねにより「オブジェとしての本」を手がけていると自負していますが、そうした彼らの指針が端的に顕在化された1冊に仕上がっています。

参考文献
森美術館 アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち


Annette Messager / Continents noirs
Éditions Xavier Barral
96 Pages
295 × 242 mm
French / English
ISBN: 978-2-36511-011-2
2012