Dayanita Singh / Museum Bhavan

Added on by Yusuke Nakajima.

ダヤニータ・シンは1961年ニューデリー生まれの写真家。ボンベイのセックスワーカーや児童労働、貧困など、インドの社会問題、富裕層やミドル・クラスをテーマとした、静かだが強いメッセージ性を孕むような作品群を発表しています。
これまでにベネツィア・ビエンナーレやシドニー・ビエンナーレなどの国際写真展、サーペンタインギャラリー(ロンドン)やモダン・アート美術館(フランクフルト)といった世界各国での展覧会開催を通じて、着実にキャリアを築き上げてきました。

彼女にとって出版物は、展覧会と同様に重要な表現手段です。これまでSteidl社とのコラボレーションで刊行されてきた写真集は、写真を発表し鑑賞するための実験場となっています。2017年に刊行された本書[Museum Bhavan]は、半ばその取り組みの集大成といっても過言ではないようです。

展覧会[Museum Bhavan]の会場は、折りたたみ式の木造建造物に写真プリントを設置して構成されました。かねてより鑑賞者との自由な交流を望むシンは、仮に読者自身が望めば展覧会の展示空間を再現できるようにとの計らいから、9つの作品シリーズを1冊ずつの「ミュージアム」に見立てて、アコーディオンのような蛇腹式の製本を採用しました。それぞれのブックは、例えば視覚的なストーリー、一方では具体的なストーリーといったように、彼女の直感のもとに選別され、章ごとにグループ分けされています。言うなれば、このボックスセットは展覧会のミニチュア版なのです。表現者である彼女がブックデザインの段階から関わることで、全体を通じてより説得力のある作品として表出されています。

Dayanita Singh / Museum Bhavan
Steidl
298 pages, 241 images
Softcover in slipcase
90 x 137 mm
10 books/exhibitions in a unique box
English
ISBN: 978-3-95829-161-4
12,000円+税