Maharam Stories

Added on by Yusuke Nakajima.

Maharam(マハラム)は、1902年にロシア移民であったLouis Maharam(ルイ・マハラム)によって創業したテキスタイル会社。1940年にはコスチュームやセットのデザインといった劇場関係のテキスタイルを手がけ、60年代には商業的インテリアにおける実力主義的なテキスタイルのパイオニアとしてその地位を確固たるものにしてきました。
厳格かつ総合的なスタンスをもとに第一線で活躍する建築家やインテリアデザイナーとの協働作業を重ねていることでも知られており、プロダクト・グラフィック・デジタルデザインからアートや建築まで、幅広い分野を取り込んでいます。

Maharam Storyは、新たにデザインされた説得力のある視覚的な着地点としてのページをつくりだす必要性に駆られて、2012年に始動しました。
この好機に際して、典型的なプロモーション的戦略を避け、クライアントであるかどうかを問わず、受け手としての読者を楽しませたり、興味深い情報を提供することができるようなオリジナルのエディトリアル・コンテンツのための場として発展させることに尽力しました。

3年の歳月が経ち、Maharamは文化的な分野で活躍するオブザーバーによる多様な断片から20にも及ぶストーリーを蓄積するに至ります。
Hans-Ulrich Obrist(ハンス=ウルリッヒ・オブリスト/キュレーター)、John Maeda(ジョン・マエダ/グラフィックデザイナー)、Murray Moss(マレー・モス/デザインアート事業家)、John Pawson(ジョン・ポーソン/建築家)、Alice Rawsthorn(アリス・ローソーン/デザイン批評家)、Michael Rock(マイケル・ロック/グラフィックデザイナー)、Stefan Sagmeister(ステファン・サグマイスター/グラフィックデザイナー)といった錚々たる顔ぶれが名を連ねていることからもわかるとおり、コンテンツは、この寄稿者たちの好奇心や多様性、そしてMaharam自体の活動の広がりを見事に反映しています。

「もちろん単なるブログとも言い得ますが、わたしたちはこのプロジェクトに賛同してくれた寄稿者たちの選択、わたしたちがその追求のために彼らに対して許容する表現の自由、そして想像や制作に関するクオリティや思慮深さを通じてこれらのストーリーを高めようとしています」と、現CEOのMicheal Maharam(マイケル・マハラム)は言います。

Felix Burrichter(フェリックス・ビュリッヒター/建築雑誌「PIN-UP」編集長兼クリエイティブディレクター)によるお気に入りのフロアに関するシリーズから、アリス・ローソーンによるJosef Hoffmann(ヨーゼフ・ホフマン/建築家)が設計した19世紀のウィーンのチョコレートショップに想いを馳せるシリーズ、またTravis Boyer(トラヴィス・ボイヤー/アーティスト)によるオンラインでセーターを売るディーラーのモヘアのフェティッシュに関する調査といった多種多様なトピックを見る限り、既成の枠にとらわれない自由さは明白です。
彼らのたくましい想像力と500もの語形式は印刷することに適しているうえ、書籍という新たな一歩を踏み出すにはこのうえない素材が揃いました。

この壮大なプロジェクトをまとめ、Mararamにとって4冊目の書籍として出版されたのが本書です。これは、Maharamに長年の友人であるオランダのブックデザイナー・Irma Boom(イルマ・ボーム)との協働作業の機会をもたらしました。
独創的に何事も恐れないようすで、まるでオブジェのような書籍をデザインすることで知られる彼女ですが、今回は厳格さのなかに遊び心がみえるやり方で、それぞれのテキストが見え隠れするように折りたたまれたページを一連として、物質的にMaharam Storiesを構築しました。
まるでテキスタイルをめくる行為を踏襲するかのようにしてページをめくるブックデザインは秀逸です。
イタリアで印刷されたフルカラーのイメージとコバルトブルーの差し色は、探索と発見の感覚を引き起こすためによく考え抜かれて配置されています。

Maharam Stories
Skira Rizzoli
284 pages
Paperback
190 x 240 mm
English
ISBN: 978-0-8478-4517-0
2015