Ellsworth Kelly(エルズワース・ケリー、1923年アメリカ・ニューヨーク生まれ)は、アメリカを代表する画家。
第二次世界大戦後の抽象表現主義のうち、「ハード・エッジ」(平面的な形態と強い色彩を特徴とする面によって、輪郭が際立った絵画の作風を指す)の代表的な作家として知られています。
本書は、2001年にニューヨークの現代美術を扱うMatthew Marks Gallery(マシュー・マークス・ギャラリー)で開催されたケリーの展覧会「Ellsworth Kelly: Relief Paintings 1954-2001」 にあわせて制作されました。
21点のカラー図版とSarah Rich(サラ・リッチ、ペンシルベニア州立大学の美術史准教授)による評論を収録しています。
本展は主に、2001年初頭に完成した6点の大きなレリーフ(浮き彫り技法)のペインティング作品で構成されました。
最初に登場する「Yellow over Black」はその名の通り、長方形の黒いキャンバスのうえに平行の位置関係で正方形の黄色いキャンバスが乗っています。
なかでも赤のうえに赤を重ねた「Red over Red」は、78歳の画家がこれまでに制作してきた作品からしても類を見ないほどすばらしい出来です。なんでもケリーがせわしないニューヨークの路上でふたつの建造物の旗が風に揺らめくようすを目にしたことがきっかけで着想したとか。
鮮やかな赤色に塗られた正方形のキャンバスが対角線上に配置された状態で構成されており、下のキャンバスがわずかに上の角と重なり合っています。極めてシンプルな並列ではありますが、鑑賞者は赤の強さとともに、ふたつの赤が同質であることを信じさせるような不可能性にフォーカスを充てます。
当時の最新作とともに、生涯にわたりレリーフの形態に関心を寄せ続けた事実を記録したともとれる、初期の6作品も展示されています。
「Two Yellows」(1954年制作)は、ケリーが6年間生活の拠点としたパリで、ニューヨークに戻る前に制作した最後のペインティングです。
「Blue Tablet」(1962年制作)は、ユダヤ美術館で開催された影響力の大きな展覧会「Toward a New Abstraction」で出展されたものの、25年もの間アメリカでは展示されることがありませんでした。
「White over Dark Blue」「Blue over Yellow」(ともに1968年制作)は本展で初公開となりました。
具象・抽象を問わず、被写体と呼べるものは何も描かれていません。
しかし、完璧にそぎ落とされた色彩だけの表現は、巨大なサイズということも相まって、視覚を通じて私たち鑑賞者に大きな衝撃を与えます。
Ellsworth Kelly / Relief Paintings 1954-2001
MATTHEW MARKS GALLERY
43 pages
hardcover with dust jacket
255 x 305 mm
English
ISBN: 1-880146-31-2
2001