1997年、Marieke Stolk(マリエケ・ストルク)・Erwin Brinkers(アーウィン・ブリンカーズ)・Danny van den Dungen(ダニー・ファン・デン・ダンゲン)によって、オランダにひとつのグラフィックデザインスタジオ・Experimental Jetset(エクスペリメンタル・ジェットセット)が設立されました。その後約20年以上にわたり、グラフィックデザインの実践の場で第一線を走り続けています。
彼らは印刷物やサイトスペシフィックなインスタレーションに焦点をあて、「言語をオブジェクトに変える」という方法論をとり、多種多様な機関のプロジェクトを手がけてきました。
[Graphic Design: Now in Production](2011年 ウォーカー・アート・センター)や[Ecstatic Alphabets / Heaps of Language](2012年 MoMA[ニューヨーク近代美術館])といったグループ展や、[Kelly 1:1](2002年 カスコ・プロジェクト)・Two or Three Things I Know About Provo(2011年 W139)での個展でうかがい知ることができます。2007年には、MoMAにより幅広い作品がセレクトされ、パーマネントコレクションの仲間入りを果たしました。
メンバーは、2000~2014年にわたりヘリット・リートフェルト・アカデミー、2013年以降はヴェルクプラーツ・タイポグラフィで教鞭を執っており、次世代の育成も担っています。
ポケットサイズ(概ね新書サイズ程度)のペーパーバックである本書は全570ページ、2.8cmほどの厚みがあり、見るからにボリュームがあります。表紙や背の部分がモノクロを踏襲し、小口は中身のページの印刷によって、白と黒の縞模様が浮かび上がります。端正なオブジェ的要素がある造本は、思わず手に取りたくなるような魅力を備えています。
肝心の内容は、画一的なモノグラフというよりは、極めてルーズで個人的なアーカイブとも言えるアプローチで迫ります。
同じくオランダのグラフィックデザイン界を牽引するLinda van Deursen(リンダ・ファン・ドゥールセン)、Mark Owens(マーク・オーウェンズ)、Ian Svenonius(イアン・スベノーニアス)といった面々からの寄稿を収録しています。
リンダのエッセイは短い洞察のシリーズで構成され、3種類の歴史的な写真を熟考する一方で、モダニズムと日常との間にある摩擦を映し出します。
その一方で、マークは3ピースロックバンドの形態に目を向けていきます。特にポスト・パンク美学にフォーカスをあて、「パワー・トリオ」というフォーマルかつコンセプチュアルな3人編成ならではのあり方に言及します。
スベノーニアスは、[13-point program to destroy language]で始まる、ひとつのポップアートのフィクションに触れています。サイケデリックな幕間への脱線の前に、「cool」の流用に関する幾つかの覚書で締めくくります。
図版で構成されるふたつの章も見逃せません。「Ex Situ」と表題をつけられた最初の章は、スタジオにある平台型のスキャナで取り収めた印刷物のアートワークを原寸大(1:1)で収めたページが続きます。第2セクション「In Situ」は、世界中のさまざまな環境で設置されたサイトスペシフィックなインスタレーションを記録しています。
最後はJon Sueda(ジョン・スエーダ)によって編集され導かれる、エクスペリメンタル・ジェットセットによって以前書かれたテキストは、彼らへのインタビュー・レクチャー・往復書簡・SNSへの投稿などの断片で構成される、インデックスないし小辞典的なアンソロジーで結びとなります。
本章は絶えず変化し続ける(そしてずっと矛盾する)論理的思考に関する分割されたコラージュとして機能していると言えるでしょう。
Statement and Counter-Statement: Notes on Experimental Jetset
Roma Publications
570 pages
Paperback
110 x 180 mm
English
ISBN: 978-9491843402
2015