カナダ・モントリオール出身のRobert Polidori(ロバート・ポリドーリ、1951年生まれ)は、現在はロサンゼルスを拠点に活動する写真家で、とりわけ建築写真で知られています。また、1997年の世界報道写真大賞を始め、数々の写真に関する受賞歴があります。
1970年代にあたる若かりし頃には、「アメリカ実験映画のゴッドファーザー」の異名を持つ映像監督ジョナス・メカスに師事し、前衛的な映画作品を制作していました。
1980年にはニューヨーク州立大学で修士号を取得、その後静物写真家へ転身し、1987年以降はパリとニューヨークの二拠点で活動を展開するようになります。The New Yorker誌にスタッフ・フォグラファーとして在籍しながら、Vanity Fair誌といった他誌での仕事も請負っていました。
本書は、ポリドーリにとって初となる美術館での回顧展にあわせて出版されました。
彼が30年以上かけて世界中を旅し、既によく知っていると思われがちな場所を撮影した100点を超える作品からセレクトされた作品が収録され、ページをめくるごとに、まるで絵画のように美しく凛々しい写真が続きます。
なかには、廃墟となってから久しいであろう室内空間も映し出されていますが、今の様相になるまでにどれだけの時間が積み重なったのだろうと想像しながら、遥か昔にはこの場所にもきっと人々が行き交い、どんなドラマが繰り広げられていたのだろうかと思いを馳せます。
終盤は、街を俯瞰した景観が広がります。
彼の航空写真は、大判カメラのキップ・ウェットスタインの特注を使って撮影されます。
隙間なくせめぎ合うようにして林立する家屋が並ぶ情景のなかに人物こそ映り込むことはないものの、そのディテールをみると人々の暮らしぶりが垣間見えてくるようで興味深いです。
Robert Polidori / Chronophagia
Steidl
152 Pages
Hardback / Clothbound
29 x 32 cm
English
ISBN 978-3-86930-698-8
09/2014