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[Interview] Nerhol: Slicing the Onion

Added on by Yusuke Nakajima.

7/26(日)まで開催中のNerhol新作展において、[Slicing the Onion]に関連する質問をし、回答を寄せてもらいました。
会場の作品とあわせてぜひご覧ください。

Q. 本シリーズを作成するに至った経緯を教えてください。

Nerholは流動する被写体をモチーフとしてきましたが、それは消費される社会の縮図である有機性に着目していたからです。ミクロコスモス(小宇宙)としても捉えられる人間、それ自体が相対的な時間軸とは別に、個の確立として持つ時間軸があり、それを写真と彫刻的な手法で定着させてきました。

それら一連の作品群の手法を元に、「静物」というそれぞれの有機物を構成してきたものを取り入れようと試みました。それには「彫る」という行為に於ける内包された形を浮かび上がらせる性質と、素材と手法のバリエーションによる視覚可能な表情の違いをみることができるという二つに大きく立ち返っています。より身近な主題をモチーフに、それらが持つ、見ることができない風景を見るために今回のシリーズがスタートしました。 

 

Q. なぜ被写体にタマネギを選んだのですか?それ以外の食物では成立しないのでしょうか?

私たちが対象にしているものは日常に多数存在していますし、必要性は日常性です。ドイツの小説家ギュンター・グラス(1927-2015)は著作『ブリキの太鼓』などを通じてドイツの社会主義に対する懐疑や反省の意を表し多くの支持を得てきましたが、自伝的作品『Peeling the Onion』では第二次世界大戦中にナチス親衛隊に入隊していたことを明かしました。本人いわく、今でこそ社会主義は過ちだと分かっているというが、社会主義に加担していたという極めてセンセーショナルな独白は、世界的にも大きな非難を呼びました。しかし、ここでいう加担とは全体主義により起こった事象であって、私たちは日常において何かを手に入れ、食していることに問題意識を置き、深刻に考えることはないでしょう。グラスは、自分の身の回りに起こった事柄を、一枚一枚タマネギの皮をむくように丁寧に書き綴ります。タマネギはシンメトリーではないのです。

 

Q. 被写体の定点観測のプロセスを教えてください。

壁面に固定されたタマネギを真俯瞰で撮影していきます。
スライサーで1ショットに対し一回ずつ、できるだけ薄くスライサーで正面から削っていきます。
タマネギには大きさの個体差が多少あるので、モノによっては70枚で全て切り落とされるものもあれば、100カット以上に及ぶものもあります。その後、撮影された一連の写真を時系列で印刷、ひとつの紙の束にし、カッターナイフで一枚ずつ彫っていきます。会場でひとまとまりのグループとなって展示されている5~7つの作品はすべて同一の被写体です。