この度POSTでは、写真作家・アバロス村野敦子による書籍の出版を記念し、「Fossa Magna - 彼らの露頭と堆積」を開催いたします。
【展覧会概要】
アバロス村野敦子「Fossa Magna - 彼らの露頭と堆積」
会期:2020年3月6日(金)~2020年4月19日(日)
会場:POST
〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-10-3
時間:12:00-20:00
定休日:毎週月曜日
オープニングレセプション:2020年3月6日(金) 18:00 -20:00
※会期が延長となりました。
アバロス村野敦子は2017年度キヤノンマーケティングジャパン主催の写真家オーディション「SHINES」にて、 造本家・町口覚によって選出されました。その後2年の制作期間を経て、町口が編集・造本設計した写真集が完成。 昨年の11月に開催された世界最大規模の国際的な写真フェア「PARIS PHOTO 」で発表されました。
本書は日本列島の本州中央部を横断している地溝帯、「フォッサマグナ」が中心テーマとなっています。その地 溝帯を発見したドイツ人地質学者のエドムント・ナウマン、彼がフォッサマグナを発見した時のエピソードに心 惹かれリサーチと撮影を行なったアバロス村野敦子、そして彼女の夫であるアバロス・ カルロが書いたテキスト。 3つの要素が重なり合い、多層的な特徴を持つ作品集となりました。
展覧会では、本の世界観を立体的に表現し、また仕様が変更された同書を販売いたします。 展覧会初日にはレセプションパーティーの開催も予定しております。 みなさまのお越しをお待ちしております。
【写真集概要】
タイトル:
Drifting across the sea,
Searching for a place to belong.
Finding a new home,
And calling it their own.
Just like the Fossa Magna,
Years gone by,
Layer by layer,
Unseen, but to be known.
アーティスト:アバロス村野敦子
編集・造本設計:町口覚
デザイン:浅田農(MATCH and Company Co., Ltd.)
テキスト:英語(別冊:日本語)
発行年:2020年
【写真集仕様】
・POST Edition (in Black & White) 限定100部
B5変形判
ソフトカバー
167mm x 257mm
全68ページ
日本語訳冊子付き
¥ 3,000 (税抜)
・POST Special Edition (in Color) 限定10部
B5変形判
ハードカバー(赤色バージョン)
176mm x 263mm
全68ページ
日本語訳冊子付き
¥ 9,000 (税抜)
【関連トークイベント】
※トークイベントの開催は延期となりました。
日時:2020年3月22日(日) 14:00- 15:30
登壇者: 竹之内耕、四方幸子、アバロス村野敦子
参加費:1,000円 (当日、現金のみ)
日時:2020年3月25日(水) 18:30- 19:45
登壇者 町口覚、田中義久、アバロス村野敦子
参加費:1,000円 (当日、現金のみ)
会場:POST
〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-10-3
ご参加をご希望の方は、post@post-books.jp まで
・お名前
・お電話番号
・参加希望日
・参加人数 を明記のうえお申し込みください。
※イベントの開催はキャンセルとなる場合がございます。ご了承ください。
【展覧会テキスト】
東京という大都市の下に「大きな溝」が横たわっている。
東京を含む日本列島の本州中央部に横たわる地溝帯のことを「フォッサマグナ」(ラテン語でFossa=溝、 Magna=大きな)といいます。名付け親であるドイツ人地質学者のエドムント・ナウマン(Edmund Naumann, 1854-1927)は明治初期に来日した際、日本の地質研究の調査の途中で立ち寄った長野・野辺山にて一夜を過ご しました。翌朝、出発しようと外にでたときにその目に飛び込んできたのは、立ちはばかる大壁のような南アル プスでした。そして、自身はその壁の下の幅広い低地の縁に立っている。巨大な地溝帯、すなわちフォッサマグ ナの存在に気がついた瞬間でした。
人々が漠然と見ていた光景が、彼の目には違う意味をもつものとして映っていた--。写真を通じて「みること 」についてを繰り返し考えてきたアバロス村野敦子は、ナウマン氏の発見当時のエピソードに強く惹きこまれま した。彼の「みたもの」の正体を探し求め、自らも「みたい」。内奥から湧き上がるその希求に突き動かされ、 フォッサマグナにまつわるリサーチと撮影をはじめました。 それを続けるうちに、彼女は「『みている』と思っているものの多くを本当にはみていないのだ」と幾度となく 思いました。けれどもみえないものの存在が「理解」や「感覚」によってみえてくる。フォッサマグナの露頭 (=地表に露出した箇所)を通じて、「みえ」やその「差」について考察するようになりました。「私たちはそ れでもやはり 「みること」で何かに繋がってゆけるのだ」と。
やがて、彼女は自らが暮らす東京での日常に目を向けるに至りました。地殻変動による隆起、海底火山の噴火、 噴火物の堆積によって溝が埋められ、ついにはその陸地がふたつの分断された土地をつなげる。こうした過程を 経てできた新しい土地のうえにある東京で、これからも生活は続き、同時に地殻変動も絶えずなされていく。 日々立ち現れるイメージを「露頭」に、そして積み上がっていくものを「堆積」と捉え、これからもずっと、層 をなすように作品制作を積み重ねていくのです。
写真集の中面において、写真イメージ同士の隙間を埋めるように配置されたテキストは、夫のアバロス・カルロ によるもの。ふたりの何気ない日常の断片が垣間見られることばのかけらたちが、本作の持つ多層的な内容の一 部をなし、「溝を埋める」という重要な装置として機能しています。
【作家略歴】
プロフィール
兵庫県宝塚市出身。聖心女子大学文学部卒業後、商社勤務を経て渡米。留学先であるアート・インスティチュー ト・オブ・シアトル(AIS)ではコマーシャル・フォトグラフィを専攻し、同校卒業後はシアトルの白黒写真専門ラ ボでプリンターとして経験を重ねる。帰国したのちは日本国内で商業写真撮影、海外での雑誌取材を中心とした 活動を展開し、その後本拠地をシンガポールに移す。2013年以降は活動の場を東京に戻し、現在は写真作家とし て表現の幅を広げる。
作家活動
アバロス村野敦子の芸術的実践は、「人々が人生で出くわすさまざまな出来事」に着目することからはじまる。 かつて自らが経験してきたこと、現在我が身に起こっていること、世界で起こっていること...。主に本人が実際 に体験したり見聞した出来事を基礎として、ドキュメンタリー的手法を用いながらまるで物語を紡ぐようにオリ ジナルの作品世界をつくりあげる。複数の写真、ときに学術的著述や散文的なテキストが差し込まれることによ り生まれる表現は、ひとつのまとまりでこそ成立し、コンセプトを的確に訴求する役目を果たす。この点におい て、写真の機械性を活用した作品だと言えるだろう。コンセプトをかたどるシークエンスは、作家のみならず、 鑑賞者をも含む各人の体験にあまねく通底する共通項、すなわち相似性を暗に示す。
【トークイベント】
2020年3月22日(日) 14:00- 15:30
トーク:「フォッサマグナ- みえることとみえないことの往還」
竹之内耕(たけのうち・こう)
新潟県糸魚川市フォッサマグナミュージアム学芸員 専門は地質学(理学博士)。 フォッサマグナや糸魚川-静岡構造線、自然災害など過去から現在に至る地殻変動 を研究。「フォッサマグナってなんだろう」(展示解説・フォッサマグナミュージアム)執筆。
四方幸子(しかた・ゆきこ)
キュレーティングおよび批評 京都府出身。現在、オープン・ウォーター実行委員会ディレクター、美術評論家連盟主催2020年度シンポジウム 実行委員長、多摩美術大学および東京造形大学客員教授、明治大学兼任講師、IAMAS(情報科学芸術大学院大学) 非常勤講師、Montalvo Arts Center(米国)滞在キュレーター(2019ー2022)。アートと科学を横断する数々の 展覧会やプロジェクトをキヤノン・アートラボ(1990-2001)、森美術館(2002-04)、NTTインターコミュニケー ション・センター[ICC](2004-10)キュレーター、またインディペンデントとして国内外で実現。国内外の審査 員・共著多数。近年の仕事に、札幌国際芸術祭2014アソシエイト・キュレーター、KENPOKU ART 2016 茨城県 北芸術祭キュレーター、AMIT(Art, Media and I, Tokyo)(2014-2018)ディレクターなど。
2020年3月25日(水) 18:30- 19:45
町口覚(まちぐち・さとし)
グラフィックデザイナー、パブリッシャー 1971年東京都生まれ。デザイン事務所「マッチアンドカンパニー」主宰。森山大道、蜷川実花、大森克己、佐内 正史、野村佐紀子、荒木経惟などの写真集をはじめ、映画・演劇・展覧会のグラフィックデザイン、文芸作品の 装丁などを幅広く手掛け、常に表現者たちと徹底的に向き合い、独自の姿勢でものづくりに取り組んでいる。 2005年、自ら写真集を出版・流通させることに挑戦するため、写真集レーベル「M」を立ち上げると同時に、写 真集販売会社「bookshop M」を設立。2008年より世界最大級の写真の祭典「PARIS PHOTO」にも出展しつづけ、 世界を視野に“日本の写真集の可能性”を追求している。2009年・2015年に造本装幀コンクール経済産業大臣賞、 2014年東京TDC賞など国内外の受賞多数。
田中義久(たなか・よしひさ)
グラフィックデザイナー 1980年静岡県生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。主な仕事に美術館などの文化施設のVI計画、 ブックショップの共同経営、アートフェなどのアートディレクションのほか、アーティストの作品集や共同制作 なども行なっている。また、飯田竜太(彫刻家)とのアーティストデュオ「Nerhol」としても活動し、国内外で 展覧会を開催している。