この度POSTでは、Stephen Gill(スティーブン・ギル)による展覧会「Nobody Pavilion(ノーバディ・パビリオン)」を開催致します。
スティーブン・ギルは、イギリス出身の写真家で、現在はスウェーデンを拠点に活動しています。当時拠点としていたイーストロンドンの空気感をイメージに取り入れるために、撮影した場所で見つけた蟻や植物、ガラス片などをカメラの中に入れて撮影したり、写真のネガを現像する際、休むことを許されない都市生活者の姿を投影したというエナジードリンクの中に浸したりと、そのアイディアは実験的でありながら、最終的に美しいイメージに昇華させます。
本作りにおいても、型にはまらない自由な発想を持つギルは、2005年にはインディペンデント出版ブームに先駆け、出版社Nobody Books(ノーバディ・ブックス)を設立しました。出版後の流通や販売もすべて自身で行い、どこまでもインディペンデントな姿勢を貫いています。Nobody Booksとして世界各国のアートブックフェアにも積極的に参加し、ギル自身が本やプリントをたくさん詰めた重たいスーツケースを運び、DIY精神が詰まった一際目を引くブースを作って写真集を販売してきました。
去る7月に開催されたTOKYO ART BOOK FAIR (TABF) 2019で、Nobody Booksブースのレプリカをインスタレーションとして展開するために、スウェーデンから写真集を含む展示作品一式を発送したところ、その荷物が途中で紛失してしまい“ノーバディ(誰もいない)・パビリオン”となってしまいました。
奇跡的にフェア2日目に荷物が届き、ギルを一躍有名にした初期の代表作『Hackney Wick』、本を土の中に埋めて敢えて泥まみれにした『Buried』や、トリニダード・ドバコへの旅の印象を表現するために全ページをシュレッターにかけた『Trinidad 44 Photographs』、今年のアルル国際写真祭で写真集アワードを受賞した『The Pillar』など、これまでギルが手がけた写真集が一堂に揃い、手にとってご覧いただける貴重な機会となりました。
今回POSTで開催される展覧会では、何もない状態のパビリオンしかご覧いただけなかった方や、まだパビリオンをご覧になっていない方たちのために、TABF2019での「Nobody Pavilion」を再現いたします。また、会場ではNobody Booksより刊行された書籍や、雑誌IMAのVol.28「スティーブン・ギルのすべて」の販売も行います。一切の妥協なく作られたユニークな写真集で、多くのアーティストや出版社に影響を与えてきたNobody Booksの世界観をぜひお楽しみください。
Stephen Gill(スティーブン・ギル)
1971年、イギリス・ブリストル生まれ。『A Series of Disappointments』『Hackney Flowers』『HAKCNEY KISSES』など、当時拠点としていたロンドン東部にあるハックニーを舞台とした作品集多数。誰も見たことのないイメージを追い求める飽くなき探求心から生まれる実験的なアイディアだけでなく、それらを美しいイメージへと昇華する徹底した姿勢を持ち合わせる写真家として高い評価を得ている。2014年にスウェーデンに移住し、最近では自然をテーマにした写真集『Night Procession』『The Pillar』を刊行した。
https://www.stephengill.co.uk/ https://www.nobodybooks.com/
【展覧会概要】
「Nobody Pavilion」
会場:POST
150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-10-3
会期:2019年8月24日(土) - 2019年9月29日(日)
時間:12:00 - 20:00
定休日: 月曜
協力: Mikiko Kikuta, IMA