Provoke - Between Protest and Performance

Added on by Yusuke Nakajima.

近年、第二次世界大戦後の日本の芸術写真が世界的にも注目される機会が増えています。なかでも見逃せないのは、1960年代末から70年代初頭の動向でしょう。激動の時代を駆け抜けた先人たちの生き様は、写真家ならば写真を撮る行為、批評家ならば言葉を用いた評論の執筆というように、彼らの職能を通じてありありと残されています。

1968年に日本で創刊された写真同人誌「Provoke(プロヴォーク)」は、通巻わずか3号しか刊行されていないにもかかわらず、第二次世界大戦後の世界的な写真史の文脈のなかでも際立った偉業だとみなされています。そればかりか、もっとも議論を喚起した代表例です。

プロヴォークは、批評家の多木浩二(1928年生まれ)、詩人の岡田隆彦(1939年東京生まれ)、写真家・写真批評家の中平卓馬(1938年東京生まれ)、写真家の高梨豊(1935年東京生まれ)により立ち上げられ、2号からは写真家の森山大道(1938年)が参加しました。
顔ぶれからもわかるように、批評の対象は写真という領域にとどまらず、芸術や文化全般、政治・思想の領域までに及びます。サブタイトルの「思想のための挑発的資料」という言葉が、彼らのスタンスを端的に象徴しています。
中平や森山の代名詞ともいえる「アレ・ブレ・ボケ」と称される粒子の粗い不鮮明なモノクロ写真は、政治や革命の色が濃厚だった当時の世相を鮮烈に映し出すことに一役買っています。

本書は、雑誌プロヴォークやその創作者たちにまつわる初めての巡回展(*1)にあわせて刊行されたカタログです。この歴史的な文脈に主眼を置きながら、「PROTEST」「PROVOKE」「PERFORMANCE」の三部構成により、プロヴォークと同時代の周辺の動きをみていきます。

「PROTEST」を直訳すれば、「抵抗」「抗議」に相当します。
過激化する学生運動。沖縄に敷設された基地をめぐる闘争。成田空港建設をめぐる三里塚闘争。毒薬の動物実験。冷戦体制下で頻発する戦争。この時代には、当局の思惑に対して怒り心頭した市民たちが、デモや抗議という行動で訴えるという構造が度々生まれました。
臨場感のある一連の写真は、いち当事者として抗争のなかに飛び込み、あるいは敢えて一歩引いた立ち位置から傍観に徹しながら、彼らの魂の叫びを聞き漏らすまいとシャッターを刻んだ写真家たちの勇敢な行動の賜物です。

「PERFORMANCE」というのは、身体を伴った表現を指します。
写真家・荒木経惟の独特な世界観や、アーティストの高松次郎・赤瀬川原平・中西夏之が中心となったハイレッド・センターの先駆性は、型破りなアプローチについ目が行きがちですが、ただ目立とうと行動したわけではありませんでした。社会構造に内在する矛盾や問題点に真っ向から向き合い、彼らなりの意思表示を通じて声高に訴えていたのです。
そうやってみていくと、先に話のあがった闘争に参加した市民たちとも重なる原動力が背中を押していたことを察します。表層だけでなく時代背景とともにみてみると、彼らの斬新なスタンスにも妙に納得がいきます。

彼らと同世代のひとたちにとっては生々しい記憶の断片であり、それ以降に生まれた世代にとっては数十年前の日本で起きた出来事を知るきっかけをもたらします。

Provoke - Between Protest and Performance
Steidl
Edited by Diane Dufour and Matthew Witkovsky
680 pages, 600 images
Four-color process
Softcover
190 x 250 mm
English
ISBN: 978-3-95829-100-3
02/2016
10,100円+税

 

※注釈
*1 巡回展
2016/1/29-5/18 アルベルティーナ(オーストリア・ウィーン)
2016/5/28-8/28 ヴィンタートゥール写真美術館(スイス・ヴィンタートゥール)
2016/9/14-12/11 ル・バル(フランス・パリ)
2017/1/28-5/7 シカゴ美術館(アメリカ・シカゴ)