Filtering by Tag: Unit Editions

Harry Pearce / Eating With The Eyes

Added on by Yusuke Nakajima.

多くのひとにとって旅は非日常の連続です。なかには、わが身に起こった想像を遥かに超える数々の体験を記録するひともいるでしょう。写真を撮る。旅日記を書く。チケットを保管する。名物を入手する。その方法はひとそれぞれです。
日々想像力を働かせて創造するクリエイターたちは、旅を通じて一体どんなことに興味を示し、記憶をとどめておくのでしょうか?

Harry Pearce(ハリー・ピアース)は、世界でもっとも大規模なインディペンデントのデザインコンサルタントであるPentagram(ペンタグラム)のパートナーを務めています。特にここ3年は、世界でもっとも著名なブランドやアーティストと協働し、アイデンティティ・インスタレーション・パッケージ・書籍デザインの側面から尽力してきました。

グラフィックデザイナーという職能がある一方で、写真家・永遠の楽観主義者・人権活動家・夢日記をつける・アクシデントによく遭遇するなど、ユニークなエピソードには事欠きません。
写真に関しては、イングランド西部で過ごした幼少期にルーツがあります。自身の父親からペンタックスのカメラを贈られた以来、思いがけない出来事に出くわしたら写真を撮って注意深く記録するようになりました。

本書には、ピアースが10年以上にわたる旅路のなかで世界中で撮り収めた写真イメージの集大成が収録されています。
彼は日本語の「目で食べる(Eating With The Eyes)」という言い習わしに感銘を受け、このユニークな視覚的瞑想へと思い至ったそうです。わたしたちを取り巻く世界に存在する常に強烈なインパクトを放つものたちを、時に悲劇的に、時におもしろく繋ぎ合わせています。

ピアースの捉えた情景は、現地の住民にとってはありふれているがゆえに看過してしまうようなことだったり、読者によっては全く興味をそそられないものかもしれません。また、写真うつりのよさで映えるように見えるだけで、現場はもっと陳腐で取るに足りない場合も十分にありえます。
仮にそうだったとしても、彼の琴線に触れたという事実は変わりません。その証に、どの写真も詩的でドラマチックな印象を受けます。もちろん写真の腕前もあるでしょうが、彼なりに好奇心をそそられたり、あるいは美しいと感じた瞬間にシャッターを切ったのだろうということがよく伝わってきます。

写真は否応なく撮影者というフィルターを通らざるをえない表現ですが、自分にはない新たな視点をもたらしてくれるというメリットがあるのです。

Harry Pearce / Eating With The Eyes
Unit Editions
282 pages
Softcover: Foiled dust jacket,  French-folded pages, Ota-bound
170mm x 230mm
English
ISBN: 978-0-9932316-3-6
2015

7,900円+税
Sorry, SOLD OUT

Spin: 360°

Added on by Yusuke Nakajima.

佇まいから中身を物語るブックデザイン。ウェブサイトの印象を決定づけるレイアウト。企業のブランドイメージを左右するコーポレートアイデンティティ。あるものの価値を最大限に引き出すブランディング。製品の売れ行きに直結するパッケージ。
これらはすべて、グラフィックデザイナーの職能のほんの一例です。クライアントや時代の移り変わりなどあらゆる要因に応じて、その都度変貌を遂げていきます。

これだけ多岐にわたるのだから、おのずと彼らの関心の幅も広がるのは想像に難くありません。
今回はグラフィックデザインを始点として、出版という別の領域へと拡張していくSpin(スピン)の活動を紹介します。

ロンドンのグラフィックデザインシーンを牽引するデザインスタジオとして知れ渡るSpinは、クリエイティブディレクターを務めるTony Brook(トニー・ブルック)が創設しました。
余分な装飾を削ぎ落としたミニマルなデザインは、その大胆さで見る者に強烈なインパクトを与えます。
ますます複雑になっていくニーズに対して、新鮮で疑いようのないアイディアで応えていく彼らの姿勢に信頼を置くクライアントは後を絶ちません。その柔軟さは、従来の枠に捉われない多様な活動分野にも反映されています。

こうした活動の一環で、ブルックは著述家のAdrian Shaughnessy(エイドリアン・ショーネシー)とともにグラフィックデザインにまつわる出版社のUnit Editions(ユニット・エディションズ)を立ち上げました。
既存の出版社はあまり取り上げなかったとしても、グラフィックデザインを語るうえで欠かすことのできないテーマを厳選している点に特徴を見出せます。例えば、グラフィックデザインの巨匠であるWim Crouwel(ウィム・クロウェル)やHerb Lubalin(ハーブ・ルバーリン)といったデザインの巨匠たちのモノグラフ、また、コーポレートアイデンティティにまつわるデザインマニュアルの概論をまとめた著書などがあります。

Spinの20年余にわたる活動をまとめたモノグラフが、Unit Editionsより出版されました。
制作に1年以上を費やしたという520ページにも及ぶ本書では、単にアートワークの図版を羅列するのではなく、インスタレーションの風景やスナップ写真、映像のキャプチャーといった関連資料が随所に織り交ぜられています。
その仕事ぶりが広範にわたることが伝わってくる一方で、あらゆる要素を一冊にまとめるとなるとどうしても散漫しがちです。けれど、そこは彼らの腕の見せどころ。緩急のついたページ構成やモノトーンを基調としたイメージコントロールにより、全体を通じて統一感のあるレイアウトを実現しました。この結果、一貫性があり完成度の高い彼らのデザインがいかに世の中へ貢献しているのかが手に取るようにしてわかるコンテンツに仕上がっています。

先述のウィム・クロウェルや彼の設立したTotal Designに在籍したBen Bos(ベン・ボス)をはじめ、グラフィックデザイン界の重鎮たちの寄稿文を多数収録し、有益な文献をも兼ねています。
グラフィックデザインに関心を寄せるすべてのひとにとって必見の名著です。

Spin: 360°
Unit Editions
520 pages
Hardback
203mm x 258mm
English
ISBN: 978-0-9575114-8-4
2015

16,600円+税
Sorry, SOLD OUT