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HET VERZAMELD BREIWERK VAN LOES VEENSTRA

Added on by Yusuke Nakajima.

オランダ人女性のロースさんは、1955年以降、純粋な制作意欲のもとセーターを編み続けてきました。その作品数は500点を超えます。
これらのセーターは、一般的にはあまり組み合わせないだろうという鮮やかな配色を選んだり、予想外の位置に袖が付けられている奇抜なパターンだったりと、彼女ならではの感性を活かし、枠に捉われない自由な発想で作られています。
これだけ膨大な数のカラフルでユニークな作品が存在するにも拘らず、これまで実際に誰かが袖を通すことも、その制作活動が脚光を浴びることもありませんでした。

この人知れず編み続けられたセーターが、DNA Charlois(ディーエヌエー シャロアー)Christine Meindertsma(クリスティン・メンデルツマ)により、ひとつの本になりました。

DNAシャロアーとは、ロッテルダム・シャロアー地区の文化的なDNAをデザイン活動で繋ぐことをねらいとした地域密着型プロジェクトのこと。
これを主導しているのが、ロッテルダムが地元のビジュアルアーティストであるNicole Driessens(ニコル・ドリエッセン)とIvo van den Baar(イーヴォ・ファン・デン・バール)が設立したアートとデザインの制作会社・Wandschappen(ヴァンスファッペン)です。
彼らはデザイナーに向けたプロトタイプの開発や制作をすることがありますが、今回はデザイナーのメンデルツマと共同でプロジェクトを進めることになりました。
メンデルツマはデザイナーという立場から、製品と原材料の生涯に着目しています。
例えば、『PIG 05049』では、一匹のブタのそれぞれの部位が、どれだけ多くの製品の原材料となっていったのかを追い、それらひとつひとつを写真に収めています。

本書の表紙には混紡のセーターを彷彿させるような質感の紙が採用されており、つい手触りを確かめたくなります。
中を開くと、1ページにつき1つのセーターが収録されています。一貫した白い背景のおかげで個々のディテールが際立ち、各々の個性が光ります。
ひっそりと編み続けられたセーターが、整然かつ洗練されたブックデザインに落とし込まれ、見事なビジュアル・アーカイブが完成しました。

2015年2月1日(日)まで21_21DESIGNSIGHTで開催されている「活動のデザイン」展では、ロースさんの手がけたセーター60点が展示されているほか、このプロジェクトに関する映像作品が上映されています。
映像では、DNAシャロアーとメンデルツマの呼びかけにより集まった人たちが実際にセーターに袖を通し、フラッシュモブ(インターネット上や口コミで呼びかけた不特定多数の人々が申し合わせて雑踏の中の歩行者として通りすがりを装って公共の場に集まり前触れなく突如としてパフォーマンス(ダンスや演奏など)を行って周囲の関心を引きその目的を達成するとすぐに解散する行為。※以上、wikipediaより抜粋)が起こった様子が映し出されています。
陽気な生演奏をBGMに、それぞれの着こなしで揚々とダンスを披露するひとたちはとても生き生きとしています。そして、初めて人が身につけたセーターとパフォーマンスを目にしたロースさんは嬉しそうに微笑み、いい表情をみせています。

 

参考文献
21_21DESIGNSIGHT webサイト

Stichting Kunstimplantaat
576 pages
Paperback
12 x 17 cm
Dutch/English summary
ISBN 978-90-819956-0-3
2012