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Richard Serra / Serra 2013

Added on by Yusuke Nakajima.

サンフランシスコ出身の Richard Serra(リチャード・セラ、1938年生まれ)は、現代美術において最も重要なアーティストです。
彼の手がける作品はとてつもなくスケールが大きく、サイトスペシフィック(特定の場所に帰属する性質)であることで知られており、アイスランドからニュージーランドに至る世界中に作品を設置することで、建築的・都市的なランドスケープをつくり出してきました。
これまでにニューヨーク近代美術館で1986年と2007年の2度にわたる回顧展をはじめ、ビルバオ・グッゲンハイム美術館での常設展(スペイン/2005年)、グラン・パレ(パリ/2008年)、ブレゲンツ美術館(オーストリア/2008年)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク/2011年)といった、世界的にも名高い美術館で展覧会が開催されています。

本書は2013年にGagosian Galleryで開催されたセラの展覧会にあわせて出版されたカタログです。
モノクロで映し出されたインスタレーション作品は、展示会場の空間を埋め尽くすほどに巨大で、見るからにどっしりとした重厚感があります。
特に人物の映り込む写真でみると、そのスケール感がよくわかります。

写真からはマテリアルの硬度や質感を推し量るのは難しいかもしれませんが、実はこれらの作品は耐候性鋼という硬質な素材で制作されています。
「この作品がもし目前に立ちはだかったら…」と考えるだけで、途方もない気持ちになります。

彫刻は三次元的な立体表現なので、物質的な存在です。一旦作品がその場所に設置されると、周囲をただよう空気は一変します。
人や動物などの生命体をモチーフにした具象的な彫刻ならばまるで本物のような気配をかもしだしますが、
何かを象るではない抽象性の高い彫刻だとしても、時として息を呑むような圧倒的な存在感を放つことがあります。

セラの作品は決して自己主張が激しいような特性ではないのですが、装飾的な要素が一切ないたたずまいが故に、近寄りがたさを通り越し、もはや崇高な印象さえあります。
作品がその場所に収まった途端、見事な壮観が生まれるほどに強烈な影響力を及ぼします。

Richard Serra / Serra 2013
Gagosian
88 Pages
24.8 x 28.6 cm
ISBN 978-0-8478-4371-8
2014