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Koto Bolofo / I Spy with My Little Eye, Something beginning with S

Added on by Yusuke Nakajima.

Koto Bolofo(コト・ボロフォ)は1959年に南アフリカで生まれ、イギリスで育ちました。ヴォーグ、ヴァニティ・フェア、GQといったファッション誌の誌面作りにも携わるほか、ベルリンやヴェネツィアの国際映画祭でショートフィルムを制作しています。また、エルメス、ルイ・ヴィトン、ドン・ペリニヨンといった錚々たるメゾンの広告キャンペーンを手がけることでも知られています。

彼はドイツを拠点とする出版社のSteidl社とも関係が深く、これまでに同社から数々の写真集を出版してきました。
代表作には、エルメスの工房に立ち入ることを許された初めての写真家として、工房の内観や職人たちの作業風景を撮り収めた[LA MAISON]、言わずと知れたイギリスの高級車ロールス・ロイスから全権委任され、丹精なクラフトマンシップに焦点を充てた[Rolls-Royce]が挙げられますが、いずれも上質で気品のある被写体をただ闇雲に撮影しているのではなく、緻密な作業の積み重ねによって生み出される不朽の魅力を印象的に捉えます。
その真髄を余すことなく写し出す写真は美しく、うっとりと優雅な気持ちにさせてくれることでしょう。

 

確かな腕と審美眼に支えられた彼の写真は、どうやらSteidl社の創設者であるゲルハルド・シュタイデル氏のお眼鏡にもかなったようです。ボロフォは、Steidl社の社屋を訪れ、その内部を撮影しました。


Steidl社は社内に全ての生産機能を持ち、編集、デザイン、印刷から製本、流通まで、本にまつわる工程を一括して自社で手がけ、年間約200冊ほどのペースで出版しています。その数字だけ聞くと精力的な活動であることは瞭然ですが、実は約35名程度で運営しているそう。少数気鋭の集団だからこそ意思疎通がスムーズに進み、無駄なく作業を遂行していくことができるのです。

 


1冊の本をつくるまでには、計り知れないほど数々の試練が待ち構えているだろうというのは想像に難くないでしょう。プロフェッショナルとしての心意気がにじみ出る真剣なまなざし、時折みせるユーモアを交えた表情。いずれも公に開かれていない作業現場ゆえに普段は表立ってみえてこないけれど、裏で本の誕生を支える重要な一幕です。
昨今「つくり手の顔がみえること」を良しとする風潮がありますが、手に取ったこの本は一体どんなひとたちによって形づくられたのかというのがみえるだけで、一層愛着がわくのではないでしょうか。

 

 

Koto Bolofo / I Spy with My Little Eye, Something beginning with S
Steidl
Book / Hardcover
29 x 37 cm
English
ISBN 978-3-86930-035-1
03/2010